令和9年1月から、「貸付用不動産」に関する相続税の評価額の算定方法が変更されます。
これまで「相続対策」として広く行われていた、貸付用不動産の取得に一定の歯止めをかける改正です。
※本稿は、令和8年8月1日現在の情報に基づいています。
相続開始前・贈与前5年以内に取得した貸付用不動産が見直し対象に
不動産の相続税評価額は、土地は路線価(そもそも解説)等、家屋は固定資産税評価額に基づいて算定され、実勢価格より低くなることが通例です。
加えて貸付用不動産は、所有者の利用や処分などの権利が制限されることから、相続税評価額を計算する際、借地権割合や借家権割合、賃貸割合等を
踏まえた評価額の減額調整が行われます。
その一方で、収益性の高い貸付用不動産は、実勢価格も高くなる傾向にあります。このため、相続開始の直前に多額の借入れをして貸付用不動産を
購入し、意図的に相続税負担を減らすといった極端な“相続対策”が行われたケースもありました。
本来、相続税評価は「時価」によるものとされていますが、貸付用不動産については実勢価格と相続税評価額との乖離が大きく、課税の公平性が
担保されていないことが指摘されていました。
国税庁によれば、この乖離を利用した評価額圧縮のためのスキームを無理に使おうとして、貸付用不動産を購入後、借入金の返済等に窮する、
固定資産税等の納税が困難となる等の事例もあったといいます。
こうした状況の是正のため、令和8年度税制改正において、貸付用不動産の評価方法が見直されることになりました。
具体的には、令和9年1月1日以後に相続税により取得する不動産のうち、被相続人等が相続税開始前・贈与前5年以内に対価を伴う取引により取得
または新築をした一定の貸付用不動産については、相続開始・贈与時期における「通常の取引価額に相当する金額」によって評価することとなります(図表)。

この「通常の取引価格に相当する金額」については、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に、
地価の変動等を考慮して計算した価額の80%に相当する金額によって評価する―とされています。
ただし経過措置が設けられており、この改正を通達に定める日までに、被相続人等が所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る)に
新築した家屋(同日において建築中のものを含む)については、改正内容を適用しないこととされています。
そもそも解説
路線価
相続税や贈与税において、土地等の価額は時価により評価することとされています。しかし、納税者が相続税等の申告にあたり、土地等についての
時価を把握することは必ずしも容易ではありません。そこで、相続税等の申告の便宜および課税の公平を図る観点から、国税当局では毎年、全国の
民有地について、土地等の評価額の基準となる路線価および評価倍率を定めて公開しています。
このうち路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額のことです。路線価方式における土地の価額は、路線価をその土地の
形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。
なお、市街地的形態を形成する地域は、路線ごとに地価変動が異なる蓋然性があることから「路線価地域」とされ、それ以外の地域については
「倍率地域」とされています。倍率地域では、その土地の固定資産税評価額に地価事情の類似する地域ごとに定めた評価倍率を乗じて評価額を
算出します。
路線価および評価倍率は毎年1月1日時点を評価時点としており、7月に公表されます。また、その評価は1年間の地価変動などを考慮し、
地価公示価格等を基にした価格の80%程度をめどに定められています。
路線価の確認方法
路線価は、路線価図によって確認できます。路線価図では、1㎡あたりの価額が
1,000円単位で表示されています。例えば、右のような路線価図で宅地Aの路線価を
計算する際は、宅地Aに面した道路に「600C」と記されているので、路線価が
1㎡あたり600,000円であることがわかります(アルファベットは借地権割合を示すもの
です)。
路線価図は国税庁Webサイト「路線価図・評価倍率表」(令和8年8月1日現在)

思わぬ税負担の可能性相続税額のシミュレーションを
評価方法の見直し後は、貸付用不動産を取得する時期によっては、相続人に対して、想定していたよりも大きい税負担が課せられる可能性が
あります。
現在保有している貸付用不動産の取得時期について確認しておくとともに、あらためて現時点で見込まれる相続税額についてシミュレーション
しておくことをお勧めします。詳細は当事務所にご相談ください。