ワンポイント税務情報

Vol.021

社長がおさえておきたい「減価償却」のきほん


会計においては、使用期間が複数年にわたる車や機械、建物などの固定資産は、一般に、減価償却をする必要があります。また、「課税の公平」「事務の簡素化」を図る観点から、法人税や所得税においても細かなルールが定められています。減価償却の基本を解説します。

きほん その1

「減価償却」ってなに?

「減価償却」とは、時間の経過や使用などによって価値が減少していく固定資産(=減価償却資産:車両、機械、建物、パソコンなど。下記図表1参照)の購入費用を、一度に経費として計上するのではなく、使用可能期間(耐用年数)に応じて、分割してその年分の経費として計上する会計上のルールの1つです。

【図表1】固定資産の分類

 会計においては「費用収益対応の原則」が重要です。これは、その資産を使って得た収益と、その資産の使用にかかる費用とを対応させること――をいいます。減価償却は、この「費用収益対応の原則」に基づくもので、正しい期間損益を計算するために行われます。
 例えば、1,000万円の機械(耐用年数10年)を購入した場合、その全額を購入した期の経費とすると、その期の利益が極端に少なくなってしまいます。その点、減価償却により、耐用年数にわたって毎年100万円ずつ費用とすることで、その企業の実態に即した正確な利益を把握できるようになります。また、減価償却費は税法で規定された耐用年数に応じた期間にわたって、定額法や定率法に基づいて計上することが一般的で、損金(必要経費)として認められます。

「減価償却」ってなに?

きほん その2

少額な減価償却資産の取り扱い

少額な減価償却資産は、税務上、一時の損金(必要経費)算入が認められています(図表2)。

【図表2】減価償却資産の取り扱い

◎使用可能期間が1年未満、または取得原価が10万円未満のもの
 使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものの場合、「消耗品費」等として、購入したその期に一括で費用計上できます。
◎取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産(一括償却資産)
 一定の要件の下でその減価償却資産の全部または特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1に相当する金額をその業務の用に供した年以後3年間の各年分において損金(必要経費)に算入することができます。「一括償却資産」としたものについては、「償却資産税」の課税対象にする必要がありません。
◎中小企業者等の「少額減価償却資産」の特例
 中小企業(青色申告法人・個人)の場合、取得価額が30万円未満の減価償却資産を、年間合計300万円まで、全額その期に費用計上することができます。ただし、「償却資産税」の課税対象となるため、市区町村への申告が必要になります。

「取得価額」に消費税の額を含めるかどうかは採用している経理方式によります
●税込経理の場合:消費税を含んだ金額
●税抜経理の場合:消費税を含まない金額
 ※免税事業者の経理方式は税込経理

きほん その3

償却資産税の申告もお忘れなく

 建物や車両(自動車税対象)、ソフトウェア等を除く事業用の減価償却資産には、償却資産税がかかります。
 その年の1月1日時点で所有している償却資産(例:舗装路面、看板、建設機械、応接セット、パソコン、自動販売機など)の評価額に、税率(標準税率は1.4%)を乗じた額が課税されます。(原則として、償却資産税の免税点は課税標準額150万円未満とされています。免税点の判定は市区町村ごとの償却資産の合計額によります。)
 毎年1月31日までに、その資産の所在する市区町村ごとに「償却資産の申告書」を提出する必要があります(東京23区の場合は各都税事務所)。

 注意したいのは、廃棄等をした償却資産がある場合です。「その資産をすでに所有していない」ことを市区町村へ申告しない限り、減価償却費相当額を差し引いた帳簿価額(課税標準額)を基礎として償却資産税が課税されることになりますので、年末の大掃除の時などに、固定資産台帳と現品とを照合して、その資産が実際に存在しているかどうか、きちんと確認するようにしましょう。使用していない償却資産がある場合は、廃棄等を検討することも必要です。
 償却資産を新たに取得したり、廃棄等をしたりした場合には、その事実が確認できる書類(見積書や請求書、リース契約書等)を必ず保存しておくとともに、固定資産台帳の更新も忘れずにしておきましょう。

Vol.020

年末調整直前!

おさらい!「年収の壁」


 所得税の「年収103万円の壁」や、社会保険の「年収106万円の壁」の見直しなどにより、何かと話題の「年収の壁」。働き方が変化した方も多いと思われます。それによる年収の変化は12月以後に行う年末調整にも大きく関係するため、今一度、おさらいしておきましょう。

※本欄の「年収」とは、給与所得者の年間給与収入のことをいいます。また、会社員の夫とパートで働く妻、大学生の子どもがいるケースを例に説明しています。

「年収の壁」には、次の2つがあります。
(1) 税金にかかわるもの
(2) 社会保険にかかわるもの

(1) 税金にかかわる「壁」

 税金にかかわる「壁」には、納税者本人の所得税(住民税)に影響するものと、その配偶者や親等の税負担に影響するものとがあります。

「年収の壁」と税金・社会保険料の負担の関係

税金にかかわる「壁」

※1 自治体によっては110万円以下でも住民税均等割が課税されます
※2 勤務先の従業員数や週の勤務時間等によって、健康保険・厚生年金保険の社会保険料負担が発生します
※3 19歳以上23歳未満の人の被扶養者認定における年収要件が「150万円未満」に引き上げられました。(令和7年10月1日適用)

税金にかかわる「壁」

所得税の「160万円の壁」と住民税の「110万円の壁」
 会社員やパート、アルバイト等で働く給与所得者は、令和6年分までは「年収103万円以下」であれば、所得税がかかりませんでした。令和7年度税制改正により、所得税の給与所得控除の最低保障額と基礎控除額が見直され、所得税がかからない年収が「160万円以下」にまで引き上げられました。
 一方、住民税については基礎控除額と非課税基準額が変わっていないため、年収が110万円を超えていると課税されます(令和8年度分から)。また、自治体によっては、110万円以下でも住民税均等割りが課税されます。

配偶者の所得税負担にかかわる「201万円の壁」
 妻の年収が160万円以下であれば、その夫は自身の収入から最高の38万円の「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けることができます(ただし夫本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合)。妻の年収が160万円を超えると夫の控除額が段階的に縮小し、201万6,000円以上になると控除が受けられなくなります(「201万円の壁」)。

大学生年代の子を扶養する親の所得税負担にかかる「150万円の壁」「188万円の壁」
 「150万円の壁」とは、生計を一にする大学生年代(19歳以上23歳未満)の子等の年収が150万円以下であれば、子等を扶養する親は63万円の「特定扶養控除」または「特定親族特別控除(令和7年度税制改正により創設)が受けられるというものです。子等の年収が150万円を超えても、188万円以下までは「特定扶養親族特別控除」の適用が受けられます。ただし、控除額は段階的に縮小し、188万円を超えると控除が受けられなくなります(「188万円の壁」)。

(2) 社会保険にかかわる「壁」

所得税がかかる範囲は「年収160万円以下」となりましたが、社会保険への加入により社会保険料の負担が生じる「106万円の壁」と「130万円の壁」があります。

 ①勤務先の規模による「106万円の壁」
 勤務先の従業員数(厚生年金保険の被保険者数)が51人以上の事業所であり、かつ下記の条件をすべて満たすと、健康保険・厚生年金保険の保険料の負担が生じます。

  • 月額賃金が8万8,000円以上(年収換算で105万6,000円以上/残業代・賞与・通勤手当・臨時の手当は原則含まない)
  • 週の勤務時間が20時間以上30時間未満(残業時間は原則含まない)
  • 2か月を超えて働く予定がある
  • 学生ではない(休学中・定時制・通信制の人は除く)

 ②「130万円の壁」
 夫の扶養に入っている妻の年収が130万円以上になると、妻の勤務先の規模や労働時間等にかかわらず、原則として扶養から外れ、妻自身で国民健康保険・国民年金の保険料を支払うことになります。

Vol.019

その「資産」、本当に「お金になる」もの?

「投資その他の資産」の中身をチェックしてみよう!


 貸借対照表(B/S)の「資産の部」に表示される固定資産。このうち、長期的な保有を目的とした資産は「投資その他の資産」に区分されます。ここに表示されるものはすぐに現金化しにくいため、資金繰りや事業承継に影響を及ぼすことも。年1~2回は中身をチェックしましょう。

「すぐにお金に換えられない資産」で自社のB/S、凝り固まっていませんか?

 貸借対照表(B/S)の「固定資産」は、目に見える「有形固定資産」(建物、機械、土地など)、目に見えない「無形固定資産」(ソフトウェア、借地権、特許権など)、そして「投資その他の資産」に区分されます。
「投資その他の資産」は、長期間の保有を目的とした資産をまとめたもので、具体的には、次のようなものが該当します。




「投資その他の資産」の例
投資有価証券(長期の資産運用を目的として保有する株式、国債、社債、投資信託等)
子会社・関係会社株式
出資金       敷金・保証金
長期貸付金     長期前払費用
保険積立金     投資不動産
リゾート会員権・ゴルフ会員権
破産債権・更正債権

 これらの資産は、会社の本来の業務とは直接には関係しない資産であり、将来のために保有している資産といえます。そのため、「資産」とはいえ、「すぐに現金化するのが難しい(=流動性が低い)」という特徴があります。
 資金繰りのことを考えれば、「すぐに現金化して使うことのできる(=流動性が高い)」資産、例えば「現金」「預金」「売掛金」などが多い状態が理想です。
 ところが、「投資その他の資産」に区分される資産が多いと、いざというときに現金化できず、資金繰りが苦しくなってしまう_いわゆる「凝り固まった」B/Sになっているともいえます。

その「資産」、本当に「お金になる」もの?

「含み益」が一転して「含み損」に!?資金繰りが苦しくなるケースも

 「投資その他の資産」は、原則として取得価額で計上します(名義変更料や登録料も含まれます)。株式や不動産等を長い間保有している間にその価値(市場価値)が下がってしまい、多額の「含み損」が発生していることがあります。
 特に、バブル期に取得した投資用の不動産やゴルフ会員権がある場合などは注意が必要です。経営上、大きな影響がない資産であれば損失の計上を見込んで売却することも検討しましょう。

その「資産」、本当に「お金になる」もの?

 一方で、保有している間に価値が上がった資産がある場合、「含み益」が発生します。含み益がある資産を保有していることは経営上の安心材料の1つであり、含み益を有する資産の評価をもとに金融機関から融資を受けられる_などのメリットもあります。
 ただし、あくまで未実現の利益であり、結局、売却しない限り現金にはなりません。時価が常に変動する株式等は含み益が一転して含み損になることもあります。現金化するタイミングを逃してしまい、資金繰りが苦しくなってしまうケースもあるのです。
 また、相続の際には、取得価額から時価に評価し直して自社株式を評価するため、自社株式の評価額が高く計算され、その結果、後継者(相続人)の税負担が多額になる可能性があります。自社株式の評価を定期的に行い、計画的な贈与や譲渡、「特例事業承継税制」の適用も検討してみると良いでしょう。

「6つの視点」からチェックしてみましょう

 「投資その他の資産」に区分されるものは頻繁に取引されるものではないため、見落としがちなところでもあります。自社のB/Sの「投資その他の資産」の状況を、次の視点からチェックしてみましょう。

☆「投資その他の資産」をチェック!

☐経理処理は適切か?
 →資産計上すべき金額は税法にも規定されているので注意しましょう。
☐本当に必要な資産か?
 →価値が大きく下落した資産や過大な投資は、整理・売却を検討しましょう。
☐すぐに現金化できるか?
 →いざというときに売却等ができるかが重要です。
☐含み損が出ていないか?
 →放置せず、処分なども検討しましょう。
☐含み益を過信していないか?
 →価値が下がるリスクも考慮しましょう。
☐回収可能性はあるか?
 →債権は実際に回収できるか確認を。

 ~参考~

保険料(保険積立金と長期前払費用)の処理に注意
企業が保険契約をする際、契約内容や支払方法に応じて、経費になる部分は「保険料」または「厚生費」、経費にならない部分は「保険積立金」または「長期前払費用」で処理します。保険契約の内容によって、税務上の取扱いが異なるので注意が必要です。

保険積立金
 養老保険・終身保険など貯蓄性のある保険の場合、契約時に支払った保険料のうち、貯蓄性のある部分を「保険積立金」として資産計上し、特約など損金算入できる部分は「保険料」「厚生費」として処理します。

長期前払費用
 長期契約で一括して保険料を支払う損害保険(火災保険など)の契約時に支払った保険料は「長期前払費用」として資産計上し、期間ごとに費用配分して、「保険料」として処理します。また、保障が長期にわたって続く定期保険の生命保険料は、その契約期間や加入者の年齢等によって損金になるかどうかが変わります。損金にならない場合は「長期前払費用」として処理します。

Vol.018

それって「福利厚生費」?


「福利厚生費」は従業員への慰労や生活の充実等のために要する費用で、税務上、一定の要件を満たすことが必要となります。その要件を満たしていない場合、給与として取り扱われる可能性がありますので注意が必要です。

「福利厚生費」に該当するのはどんなもの?

「福利厚生費」には、「法定福利費」と「法定外福利費」があります。「法定福利費」は、社会保険料などの会社負担が義務付けられている費用で、「法定外福利費」は、従業員やその家族のために企業が任意で設ける福利厚生のための費用です。
一般に「福利厚生費」といえば、この法定外福利費を指すことが多く、次のようなものが該当します。




福利厚生費(法定外福利費の例)
◇社宅の提供
◇社内レクリエーション(社員旅行など)

◇食事代の補助、食事の提供(まかない、仕出し弁当の提供等)
◇健康診断・人間ドックの費用
◇通勤費
慶弔見舞金
◇自社商品・サービスの社員割引
◇育児・介護サービス費用の補助  など

税務上、福利厚生費として認められるためには、次の要件を満たす必要があります。

  1. 全従業員が対象であること
  2. 現金や換金性の高いものの支給ではないこと
  3. 社会通念上妥当な金額であること

※福利厚生に関する規程を定め、社内に周知しておくとよいでしょう。

こんなケースはどうなる福利厚生費か、給与か?

(1)従業員への社宅提供や住宅手当等

会社が所有する住宅、または会社が家賃を支払って借り上げた住宅を、従業員に対して社宅・寮として提供する場合、従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば、残りの会社負担分は福利厚生費になります。従業員の負担割合が50%未満や無償であれば、企業負担分はその従業員への給与として取り扱われます。
(図表1)
従業員が直接契約する賃貸住宅の家賃や住宅ローンなど住宅に関連する費用を補助する目的で支給する「住宅手当」等は、給与として取り扱われます。

(図表1)社宅の家賃の負担割合

(2)社員旅行の費用

従業員の慰安やレクリエーションを目的として行われる社員旅行については、次の要件をいずれも満たしていれば、原則として、その費用は福利厚生費になります。

  1. 4泊5日以内(海外旅行は現地での滞在日数)の旅行であること
  2. 全従業員を対象とした旅行で、参加人数が職場全体の50%以上であること

 旅行先で、一部の従業員のみが参加して会社負担でゴルフコンペを行った場合の費用は給与として取り扱われます。
 なお、取引先の接待、慰安等のための旅行は交際費に該当します。

(3)創業記念品や永年勤続者への報奨

創業記念品の支給、永年勤続者に対する報奨(記念品の支給・旅行や観劇への招待など)の費用は、次の要件をいずれも満たしていれば福利厚生費となります。

【創業記念品の場合】

  1. 支給する記念品が、社会一般的にみて記念品にふさわしいものであること
  2. 記念品の処分見込価額による評価額が10,000円以下(税抜)であること
  3. 一定期間ごとに行う行事で支給するものは、おおむね5年以上の間隔で支給するものであること

【永年勤続者への報奨の場合】

  1. その費用が、その人の勤続年数や地位などに照らして社会一般的にみて妥当な金額以内であること
  2. 勤続年数がおおむね10年以上である人を対象にしていること
  3. 同じ人が2回以上表彰を受ける場合は、おおむね5年の間隔が空いていること

ただし、記念品の支給や旅行・観劇等への招待の費用に代えて、現金や商品券などを支給する場合は、その全額(商品券の場合は券面額)が給与扱いとなります。

(4)従業員の健康診断費用

全従業員を対象にした健康診断を実施する場合、その費用を会社が病院等へ直接支払う、または従業員が費用を立て替え、後日、精算するのであれば、その費用は福利厚生費になります。

ただし、一般的な健康診断を超え、費用が高額となるものは給与として取り扱われます。

従業員の健康診断費用

(5)従業員への食事の支給やまかない費用

従業員に食事を支給(まかない、仕出し弁当の提供等)する場合、次の2つの要件を満たせば福利厚生費となります。(図表2)

  1. 従業員が食事の価額の半分以上を負担していること
  2. 会社負担分が1か月あたり3,500円(税抜)以下であること

 また、上記の要件を満たせば、食事に限定したチケットを配布する場合も福利厚生費になりますが、食事手当として現金支給すると給与となります。

(図表2)従業員への食事の支給やまかない費用

Vol.017

親の税負担を軽減する「特定親族特別控除」が新しくできました


大学生年代の子を持つ親は、子がアルバイト等によって「年収103万円」を超えると自身の所得から扶養控除(「特定扶養控除」)を受けることができませんでした。令和7年度税制改正において、親の税負担軽減のための新しい制度「特定親族特別控除」が創設されました。

※本稿の「年収」とは、年間給与収入のことをいいます。


☆子の年収が「188万円以下」までは親等が所得控除を受けられるしくみ

これまで大学生年代(19歳以上23歳未満)の子を持つ親等(扶養する側)は、子(扶養される側)のアルバイト等による年収(給与収入のみ)が103万円以下であれば親等の所得から扶養控除(「特定扶養控除」)として63万円の控除を受けることができました。一方で、子は親等の税負担が増えないように「年収103万円以下」に抑えるために働く時間を調整することも多く、学生アルバイトを雇用する事業者は人材確保に苦慮することも多くありました。

そうした状況を税制面から改善するため、令和7年度税制改正で「特定扶養控除」の子の年収要件が引き上げられたとともに、「特定親族特別控除」が創設されました。大学生年代の子が収入を増やしても、親等の税負担が軽減されるような仕組みとなっています。

親の税負担を軽減する「特定親族特別控除」が新しくできました

改正①「特定親族特別控除」の創設

「特定扶養控除」に加え「特定親族特別控除」が創設され、大学生年代の子の年収が123万円を超えても、150万円以下(合計所得金額85万円以下)であれば、「特定扶養控除」と同額(63万円)の「特定親族特別控除」を親等が受けることができるようになりました。また、子の年収が150万円を超えても、年収188万円以下までは親等が所得控除を受けられます。ただし子の年収の増加につれて控除額が段階的に縮小し、年収188万円を超えると控除がなくなります。(図表1)

「特定扶養控除」「特定親族特別控除」の子の年収要件(合計所得金額用件)、親等の控除額の詳細は図表2のとおりです。

図表1

改正② 「特定親族特別控除」の創設

「特定扶養控除」に加え「特定親族特別控除」が創設され、大学生年代の子の年収が123万円を超えても、150万円以下(合計所得金額85 万円以下)であれば、「特定扶養控除」と同額(63万円)の「特定親族特別控

除」を親等が受けることができるようになりました。また、子の年収が150万円を超えても、年収188万円以下までは親等が所得控除を受けられます。ただし子の年収の増加につれて控除額が段階的に縮小し、年収188万円を超えると控除がなくなります。(図表1)

「特定扶養控除」「特定親族特別控除」の子の年収要件(合計所得金額用件)、親等の控除額の詳細は図表2のとおりです。

改正③ 学生自身の税負担も軽減

アルバイトによる給与収入がある学生は、これまで年収103万円を超えても年収130万円以下であれば、「勤労学生控除」(27万円)を受けることで税負担はありませんでした。令和7年度税制改正において、勤労学生控除の所得要件が年収150万円以下(合計所得金額85万円以下)に引き上げられました。つまり、年収150万円までは、アルバイトをしている学生自身の所得税負担がなく、かつ、親の税負担もこれまでと変わらないということになります。

☆就業調整の緩和に期待学生アルバイト人材が確保しやすく!

これら①~③の改正は、令和7 年分の所得税(年末調整において摘用)、令和8年度分の住民税から適用されます。
今回の改正により、アルバイトをしている学生等が、「年収103万円」を超えて、より多く働けるようになります。そのため、学生アルバイトを雇用する事業者は、柔軟なシフトを組むことができるようになります。

*収入や労働時間が増えることで、学生アルバイト自身の住民税・所得税の負担、社会保険への加入義務が発生する場合があります。

図表2

Vol.016

令和7年度税制改正のポイント
年収160万円まで所得税の課税最低限が引き上げ


令和6年末から大きな話題となっている「年収103万円の壁」の見直し。令和7年度税制改正により、所得税が課税されない範囲(課税最低限)が「103万円」から「160万円」へと見直されることになりました。
※「本稿」の「年収」とは、給与所得者の年間給与収入のことをいいます。

☆一定の要件のもと所得税の課税最低限が「年収103万円」から「160万円」に!

令和6 年分まで、年収103万円以下の給与所得者(会社員、パート、アルバイト等)は、所得税がかかりませんでした。この103万円の課税最低限の根拠は、給与所得控除の最低保障額55万円と基礎控除額48万円の合計です。

本改正で、給与所得控除と基礎控除の金額が見直され、所得税の課税最低限が160万円まで引き上げられました。(図表1)

「103万円が160万円になった。差額の57万円が一律で引き上げられた」と思われがちですが、実は少し複雑です。実際は、給与所得控除の10万円と基礎控除47万円(合計57万円)の引き上げが適用されるのは、年収200万円相当以下の人だけです。

改正内容について詳しく見ていきましょう。

図表1 所得税の課税最低限の引き上げ

図表1 所得税の課税最低限の引き上げ

給与所得控除の最低保障額が65万円に

給与所得者の所得税額の計算(図表2)においては、まず給与収入から給与所得控除を差し引いて「給与所得」を算出します。
給与所得控除額は図表2 給与所得控除の計算式で計算します。年収162万5,000 円以下であれば55万円の給与所得控除(最低保障額)がありましたが、令和7年分以降は、年収190万円以下であればこの最低保障額が10万円アップし65万円になります。なお、年収190万円超の給与所得者については、給与所得控除の最低保障額引き上げによる影響はありません。

「基礎控除」は最大47万円上乗せ

次に、給与所得からさまざまな所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除等)を差し引くことで「課税所得」を算出します。本改正では、ほとんどの給与所得者に適用される基礎控除の金額を引き上げる(図表2 令和7年分以降の基礎控除額)ことで、幅広い層で所得税額が軽減されることとなります。

例えば、合計所得金額132万円(年収200万円相当)以下の人については、47万円が上乗せされ、改正前の48万円と合わせて基礎控除額が95万円となります。

一方、合計所得金額132万円超2,350万円以下(年収200 万円相当超2,545 万円相当以下)の人については恒久的に適用される上乗せは10万円となります。(合計58万円)ただし令和7年分・8年分に限り、年収200 万円相当超850万円相当以下の人を含めて税負担を軽減する観点から、合計所得金額に応じて基礎控除額を上乗せする特例が設けられています。なお、合計所得金額2,350万円(年収2,545万円相当)超の給与所得者には、本改正の影響はありません。(年収に応じて基礎控除額が段階的に減少)

☆複雑になった給与計算事務にきちんと対応しよう!

令和7年分・8年分の所得税は、幅広い年収層で2万円から3万円程度の減税となります(図表2 給与収入に応じた減税額(令和7年分・8年分))。その結果、従業員の給与計算事務への影響が見込まれます。

例えば、令和7年分の所得税についてはすでに毎月の給与から源泉徴収を行っていますが、減税分については年末調整で還付することになり年末調整事務が複雑になることが予想されます。また、ほとんどの従業員について、令和8 年分の源泉所得税額が変わることになります。

図表2 給与所得者所得税額算出方法

図表2 給与所得者所得税額算出方法

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