不安定な世界情勢を背景に、急速に資源高が進んでいます。原材料費や運送コスト等の増加も懸念されるなか、
労務費の上昇も大きな経営課題。適正利益の確保がカギとなるいまこそ、社長だけでなく全社員が、「価格交渉力」を身につけることが肝要です。
「過度な我慢経営」していませんか?
価格交渉を検討する時期が来ているかも
2026年の年明けから、不安定な世界情勢が続いています。それに伴う円安や資源高の影響で、製造コストや運送コストは上昇傾向。
加えて、令和8年3月をもって、令和7年度の最低賃金がすべての都道府県で発効し、全国加重平均は「1,121円」となりました。
人手不足が叫ばれ、かつ賃上げ機運も高まるなか、人件費をはじめとした労務費の増加は避けられない状況にあります。
このような経営環境下で、適正利益を確保するのは至難の業。原価管理の徹底に加え、重要となるのが、取引先との価格交渉を通じた
価格転嫁(値上げ)の検討です。
「値上げは心苦しい」「値上げ交渉を持ちかけたら、取引を打ち切られるかも」と悩む社長さんも多いことでしょう。
けれども、「過度な我慢経営」を続けることは、①資金繰りが苦しくなる②高品質な商品・製品・サービスの提供が難しくなる
③賃上げができず、人材が定着しない・採用が困難になる―等のリスクを増加させる要因となり得ます。
近年は、資源高・原材料高などを背景とした値上げを受け入れる社会的な雰囲気も醸成されてきました。
加えて、令和8年1月から「中小受託取引適正化法(取適法)」が施工されており、「BtoB」取引における価格交渉をしやすくする
法環境も整備されています。
そろそろ、「過度な我慢経営」に別れを告げる時が来ているのかもしれません。取引先との価格交渉について、検討してみましょう。

“交渉上手”になるための5つの実践ポイント
取引はあくまで「対等な立場」で行うもの。この前提を踏まえ、取引先との価格交渉に臨む際の5つのポイントを確認しましょう。
POINT① 自社業種・業界の価格改定に関する情報を収集する
同業他社も価格交渉を検討していることが想定されます。まずは、自社が所属する業界団体や、同業他社に関する情報を収集しましょう。
業界大手の動向等は、新聞報道やプレスリリース等でチェックできます。地域や業界団体の会合等へ積極的に参加することで、
同業他社の動向をうかがうこともできます。
POINT② 価格交渉を行うタイミング・順番を検討する
取引先の業界や事業特性を把握・理解した上で、価格改定のタイミングや交渉順を検討します。取引先が複数ある場合、
業界や地域のプライスリーダーから始めると、
「〇〇社さんが応じているのなら…」と、交渉がスムーズに進む可能性が高まるでしょう。
POINT③ 取引先に対して価格交渉の申し入れを行う
実際に価格交渉を行う際は、交渉内容を記した書面で事前申し入れを行うと良いでしょう。取引条件がどう変化するのか、
現在の取引条件での問題点が何か―といった点が明確になり、交渉が進めやすくなります。
POINT④ 価格交渉のベースとなる説明資料を準備する
原材料費、エネルギー費、労務費等の変動を示すデータなどをまとめておきます。加えて、単なる値上げ交渉に終わらせず、
自社の強みや付加価値を活かした代替案の提示ができるように準備しておきます。「これまで自社はどのような価値を提供してきたのか」
といったPRや、製造工程の見直し、より満足度が高い商品・サービスの新規提案などが行えれば、両者にとってより良い取引につながる機会なります。
POINT⑤ 発注後に発生する価格交渉への対応を想定・準備しておく
Webサイトデザインや出版物の制作など、見積段階と完成段階とで金額に乖離が見られがちな業務は、見積の前提となる取引条件を
見積書に明示します。加えて、特記・備考欄に、「価格調整の可能性があり得る点」も明記しておき、取引先との合意を得ます。
想定外の作業量が発生した―等、見積段階で想定できなかったケースが発生した場合には、その状況を踏まえ、できるだけ迅速に
取引先と再交渉に臨むことが、トラブル回避と信頼関係の維持につながります。
価格交渉は企業の成長を支える重要な経営活動です。適正利益の確保が、持続的な成長と賃上げのベースとなります。社長はもちろん、
従業員の1人ひとりが価格交渉力を身につけ、会社全体で、毅然とした姿勢で対応することが最も重要なポイントです。